スピロノラクトン (アルダクトン®︎)のにおいですが、実際に飲んでる患者さんや一包化調剤する薬剤師なら、まぁあの硫黄臭は気になりますよね。
硫黄のにおいは腐卵臭としても有名で、温泉で感じるあのにおいです。
今回は『薬のにおい』について、臭くて有名な(失礼)スピロノラクトンを例に化学構造式の観点から解説します。
スピロノラクトン はどんな薬?
スピロノラクトン(アルダクトン®︎)は利尿薬で、高血圧症や浮腫(むくみ)に対してよく使われます。
ミネラルコルチコイド受容体(MR)でステロイドホルモンの一種であるアルドステロンに拮抗し、その作用を抑えるはたらきを持ちます。
スピロノラクトンなどのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)について、化学構造式を比較した記事もあるので、ぜひそちらもご参照ください。
【ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬】エサキセレノン(ミネブロ®︎)と従来薬を化学構造式で比較!
スピロノラクトン の硫黄臭
インタビューフォームからも硫黄臭の酷さがわかる?!
添付文書より細かい医薬品情報が載っている医薬品インタビューフォームを見てみると、温度と湿度の試験(40℃3ヶ月(非包装)と30℃75%RH3ヶ月(非包装))の結果に、“イオウ臭がひどく製品として使用不可能“とまで書かれています。
3ヶ月間この条件にした時、一体どれだけ臭くなるんですかね笑
一包化調剤でもスピロノラクトンの硫黄臭をその場で感じ取れるくらいには臭うわけですが、使用不可能なほどとなると、それを遥かに上回るにおいになるのかもしれません。
スピロノラクトン の分解と硫黄臭
スピロノラクトンの分解(代謝)によって硫黄化合物が発生する可能性があります。
生体内代謝でもスピロノラクトンの活性代謝物の一つであるカンレノンを生成する過程で、いくつかの含硫化合物が生成されることも示唆されています。
①チオール(R-SH)
おそらくチオール(R-SH)がスピロノラクトンの硫黄臭に最も影響している化合物ではないでしょうか。
チオールの嗅覚閾値は低く、ごく微量でもそのにおいを感じ取ることができます。
スピロノラクトンの脱アセチル化によりチオールとなり、その後、新たなチオールを生成します。
スピロノラクトンの成分含量が低下しない程度のごく微力でも、我々は硫黄臭として感じ取っているのでしょう。
②チオ酢酸
チオ酢酸もスピロノラクトンの分解生成物として示唆されています。
こちらも腐ったような臭いを感じる物質で、スピロノラクトンからチオ酢酸の形で脱離し生成します。
最後に
スピロノラクトンのにおいは一包化調剤をしている薬剤師なら誰でもあの”硫黄臭”を感じているでしょうし、患者さんからもたまに「なんか臭いよね」と言われることもあります。
こうした「薬のにおい」も化学の視点で考えると面白いですよね!
参考: