【メトホルミンとオルメサルタンの一包化で着色?!】配合変化の反応機構を解説!

化学(薬学生向け)

実務でも度々問題になる メトホルミン と オルメサルタン の一包化ですが、薬剤師国家試験でも問われている有名な配合変化の一つで反応機構も交えて復習しておきましょう!

薬学生の方々は国家試験対策や復習の参考にしてみてください。

メトホルミン の配合変化(第105回薬剤師国家試験 問210–211)

メトホルミンとオルメサルタンの一包化による配合変化は第105回薬剤師国家試験で出題されています。

実務部分は解決の参考にもできるでしょう。

薬剤師国家試験、メトホルミンの配合変化
メトホルミンの配合変化と着色、薬剤師国家試験
メトホルミンとオルメサルタンの着色、薬剤師国家試験

解答:問210→1, 5、問211→4

① オルメサルタン と ジアセチル の生成

文献では塩基性条件下の反応のため生体内で同様の反応機構で進むとは考えづらいですが、加水分解の過程としては参考になります。

オルメサルタンとメドキソミルの代謝、ジアセチルの生成反応
J Bio Chem. 2010 Apr 16; 285(16): 11892-11902. を参考に作成

一方で、オルメテック®︎錠インタビューフォームには代謝物の中間体が示されており、それをもとに反応機構を考えると、メドキソミル基の加水分解後にケト–エノール互変異性を伴いジアセチルが生成されるのではないかと推測できます。

オルメサルタンの代謝、加水分解

加水分解の反応機構はインタビューフォーム記載の中間体から予想されるものを、炭酸エステルの脱炭酸反応と加水分解を参考に作成しました。

(有機化学専門の方が見たら良い順序ではないと思うので、矢印に苦し紛れの番号を振ってみました笑)

また、中間体からジアセチルが生成するまでの反応機構は下図のようにケト–エノール互変異性を伴うものと予想されます。
インタビューフォームの代謝経路でも、ジアセチルの生成前にオルメサルタンの活性代謝物とCO2が分離しているため、反応の順序はおそらくこのようになるでしょう。

オルメサルタンの活性化、ジアセチルの生成反応
オルメテック®︎錠インタビューフォームを参考に作成

余談ですが、オルメサルタンにはわずかに特異なにおい(発酵乳の特徴的な香り)が発生する可能性があり、これもメドキソミル基の分解で生成したジアセチルが原因と言われています。(第一三共HPより)

② メトホルミン と 着色物質 の生成

オルメサルタンのメドキソミル基の分解で生成したジアセチルとメトホルミンが脱水縮合反応を起こして着色物質に変化するようです。

メトホルミンは2つのグアニジンがくっ付いた構造をしていて塩基性が高く、また求核性も高いため、嵩高くない電子不足のカルボニル炭素に求核攻撃しやすい特徴もあります。

メトホルミンとジアセチルの着色反応と反応機構

推定着色物質を見ると、長い共役二重結合になっていることがわかります。

長い共役系は光によって励起しやすく、光化学反応によって着色や分解、一部の薬剤ではアレルギーに関与する物質に変化する可能性もあります。

オルメサルタンとの一包化によって メトホルミン の含量は低下する?

公式的には「含量や力価の試験は実施していないため不明」です。

私個人の推測ですが、

・メトホルミン自体が反応してしまっていることから、少なくとも着色部分は“メトホルミン“ではなくなっている
・分子構造と作用機序から、推定着色物質がメトホルミンと同じ薬効や動態的特徴を持つとは考えづらい
・含量が低下するなら、おおよそ着色部分に限られるだろう

といったことも含めて考えても、臨床的に大きな問題がないとしても避けるのが良いと思います。

加えて、オルメサルタンのメドキソミル基分解後に生成するジアセチルが着色反応に使われているということは、言い換えればオルメサルタンのプロドラッグ部分もそこで壊れているということにもなるわけで、、、気になり出したらキリがありませんね笑

国家試験の正答でもあるような対応をしたり、別包できるならそれに越したことはないでしょう。

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参考:

  • Tomoko Ishizuka, et al. Human carboxymethylenebutenolidase as a bioactivating hydrolase of olmesartan medoxomil in liver and intestine. J Bio Chem. 2010 Apr 16; 285(16): 11892-11902.
  • オルメテック®︎OD錠インタビューフォーム
  • メトグルコ®︎錠インタビューフォーム
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