【カルシウム拮抗薬(DHP・BTZ・PAA系)】化学構造式で違いを比較!〜ファーマコフォア〜

薬の化学構造と特徴

今回は カルシウム拮抗薬 の中でも、ジヒドロピリジン(DHP)系(ニフェジピン)とベンゾチアゼピン(BTZ)系(ジルチアゼム)、フェニルアルキルアミン(PAA)系(ベラパミル)について構造を確認していきます。

L型Caチャネル

電位依存性Ca2+チャネルは、様々なサブタイプが存在し、発現場所やタンパク質の構造の違いから分けられています。チャネルが開口するための電位の深さも異なります。

その中でも、血管平滑筋や心筋によく発現しているのはL型Caチャネルです。

“電位依存性”なので、文字通り活動電位がCaチャネルに伝わることでチャネルが開口し、Ca2+が濃度勾配に従って細胞外から細胞内へ流入します。
(ここで、Ca2+は直接的に生理作用を及ぼすわけではないので、セカンドメッセンジャーと呼ばれています。)

Ca2+は筋収縮に重要であり、裏を返せば阻害することで筋肉を弛緩させることができます。

L型Caチャネルにもサブタイプが存在しますが、説明の都合上わかりやすくするため、L型Caチャネルとしてまとめます。

カルシウム拮抗薬 の結合部位

L型Caチャネルにはニフェジピン(N)部位、ジルチアゼム(D)部位、ベラパミル(V)部位がありN部位はチャネルの外側に、D、V部位はチャネルの中心部に存在します。

ジヒドロピリジン系は不活性化状態のN部位に親和性が高く、Caチャネルの立体構造を変化させ、細胞内へのCa2+流入を阻害します。

ジルチアゼムやベラパミルは、チャネル細孔(イオンの通り道)の中心部付近で結合するため、Ca2+流入を物理的にも阻害します。

カルシウム拮抗薬 の化学構造とファーマコフォア

ニフェジピン(アダラート®︎)

静止膜電位の浅い(約-50mV)血管平滑筋には、不活性化状態のL型Caチャネルの発現率が高いので、ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬は結果的に血管選択性が高くなります。
(上述したように、DHP系は不活性化状態のN部位に親和性が高いため)

カルシウム拮抗薬のニフェジピンの化学構造式

ベラパミル(ワソラン®︎)

チャネル開口時(活性化状態)にチャネル細孔内部に取り込まれ、中心部で水素結合を形成し、解離速度も遅いです。
また、心臓でのL型Caチャネルは洞房・房室結節に多く発現しており、チャネル開口頻度の高い心筋で選択性が高く、頻脈性不整脈などの病態に適応を持つことにも納得できます。


ここで、日本では未承認のT型Caチャネル拮抗薬であるミベフラジルに構造が類似しているため(?)、T型Caチャネルへの親和性もあるとする報告もあります。

カルシウム拮抗薬のベラパミルの化学構造式
ミベフラジルの化学構造式

ジルチアゼム(ヘルベッサー®︎)

L型Caチャネルの細孔内部に取り込まれ、Ca2+流入を物理的にも阻害しますが、ベラパミルほどの阻害作用と解離速度の遅さがなく、結果的に血管・心臓選択性はニフェジピンとベラパミルの中間くらいになります。
(強い結合に関与しているのは、ベラパミルの中心部で見られる”水素結合”と考えられています。)

カルシウム拮抗薬のジルチアゼムの化学構造式

以上が、それぞれの薬剤の血管・心臓選択性の違いや、機序によって適している病態の違いとなります。

化学構造、ファーマコフォアから見ると、また少し理解の深みが変わってくるかもしれませんね^_^

参考:
・Lin Tang. Structural Basis for Diltiazem Block of a Voltage-Gated Ca2+ channel. Mol Pharmacol. 2019 Oct; 96(4): 485–492.PMID: 31391290
・Lin Tang. Structural basis for inhibition of a voltage-gated Ca2+ channel by Ca2+ antagonist drugs. Nature. 2017. PMID: 27556947
・Pamela Bergson. Verapamil Block of T-Type Calcium Channels. Mol Pharmacol. 2011 Mar; 79(3): 411–419. PMID: 21149638
・Yanyu Zhao. Molecular Basis for Ligand Modulation of a Mammalian Voltage-Gated Ca2+ Channel. Cell, VOLUME 177, ISSUE 6, P1495-1506.E12, MAY 30, 2019.
・柳澤 輝行.『循環器病の薬物療法』p.132-143. 1998. http://hdl.handle.net/10097/40211 

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