【SGLT2阻害薬のファーマコフォア】化学構造式から違いを比較!〜構造活性相関〜

薬の化学構造と特徴

今回は比較的近年に上市された、”SGLT2阻害薬”について化学構造から考えてみます。

しかし、、、
オープンアクセスの論文をこれでもかというほど検索してみたのですが、ファーマコフォアの全貌となる構造解析結果(文献)は出てきませんでした、、😅
基本骨格と側鎖の特性は多少わかるものの、他剤との比較には情報として不十分でしたので、SGLT2阻害薬に特徴的と言える構造を中心に考えてみます。

SGLT2とは?

Na+/グルコース共輸送体2(sodium/glucose cotransporter 2:SGLT2)は、Na+とグルコースを同じ方向へ輸送するタンパク質です。駆動力になるのはNa+の濃度勾配で、ATPのエネルギーを利用した能動輸送となります。
サブタイプとしていくつか知られていますが、腎近位尿細管ではグルコースの再吸収に関与し、SGLT1が10%、SGLT2が90%を担っています。

SGLT2阻害薬 と 構造活性相関

SGLT2阻害薬の開発において重要視されているものの一つが【SGLT2選択性】です。
SGLT1は小腸、心臓、骨格筋などにも発現しており、SGLT1を阻害すると思わぬ副作用の原因になることが懸念されています。
そのためSGLT2への選択性が重要ですが、選択性の低い薬剤でも、実臨床ではほとんど問題のないレベルという見方もあるようです。

では、ここで、SGLT2阻害薬開発の基となった「フロリジン」と、SGLT2阻害薬として実際に臨床で使用されている「カナグリフロジン(カナグル®︎)」を例に全体的な構造的特徴を見てみましょう!

SGLT2阻害薬の開発起源

図の内容と合わせて特徴をまとめると、

⭐︎グルコース結合部位とアグリコン(非糖部分)に分かれる
⭐︎アグリコンが全体的な阻害活性(結合親和性)に寄与している
⭐︎C-グリコシドが、腸内のグルコシダーゼによる加水分解防止とSGLT2阻害に必須の構造となっている
⭐︎C-グリコシドで結合した中心の芳香環がSGLT2の芳香環ポケットに嵌まり込み、固定される
⭐︎アグリコンの二つの芳香環の位置関係が阻害活性に重要である
⭐︎アグリコン芳香環の置換基がSGLT2選択性に寄与している

などがSGLT2阻害薬に重要で共通した構造的要素となっています。

続いて各薬剤の構造です。

イプラグリフロジン、ダパグリフロジン

イプラグリフロジン(スーグラ®︎)とダパグリフロジン(フォシーガ®︎)の化学構造式

ルセオグリフロジン、トホグリフロジン

ルセオグリフロジン(ルセフィ®︎)とトホグリフロジン(アプルウェイ®︎、デベルザ®︎)の化学構造式

カナグリフロジン、エンパグリフロジン

カナグリフロジン(カナグル®︎)とエンパグリフロジン(ジャディアンス®︎)の化学構造式

SGLT2阻害薬 の 強さ比較

臨床的に見て薬効に大きな差は見られないとする見解もあり、半減期やSGLT2選択性、エビデンスの多さなどで比較される場合も多いようですが、せっかくなので阻害活性(IC50)と薬理効果に相関があると仮定して、比例計算にて臨床用量で比較してみようと思います。

まず、阻害活性(IC50)(nM)の強さ(値の小さい方が強い)で比較すると、

ダパグリフロジン(フォシーガ®︎):1.3
イプラグリフロジン(スーグラ®︎):2.8
トホグリフロジン(アプルウェイ®︎、デベルザ®︎):2.9
ルセオグリフロジン(ルセフィ®︎):3.1
エンパグリフロジン(ジャディアンス®︎):3.6
カナグリフロジン(カナグル®︎):6.7

です。

これら阻害活性の強さを化学構造と照らし合わせると、アグリコン(非糖部分)の疎水性が高いほどSGLT2阻害活性も高くなる傾向があるようです。

続いて臨床用量(1日量)に換算してみると、SGLT2阻害活性の強さの順は、

イプラグリフロジン(100mg)>カナグリフロジン(100mg)>ダパグリフロジン(10mg)>エンパグリフロジン(25mg)≒トホグリフロジン(20mg)>ルセオグリフロジン(5mg)

となります。

あくまで特定の試験と文献を基に、なおかつ阻害活性(IC50)と臨床用量に整合性がある前提での比例計算のため、改めて参考程度にとお考えください。
先に述べたように、薬効に差は見られないとする見解も存在するため、その患者さんにあった薬剤選択を心掛けることが重要です。

併せて読みたい記事

参考:
・Concise and Stereodivergent Synthesis of Carbasugars Reveals Unexpected Structure-Activity Relationship (SAR) of SGLT2 Inhibition. Wai-Lung Ng. Sci Rep. 2017; 7: 5581. PMID: 28717146 

・Sodium-Glucose Cotransporter 2 (SGLT2) Inhibitors from Natural Products: Discovery of Next-Generation Antihyperglycemic Agents. Chang-Ik Choi. Molecules. 2016 Sep; 21(9): 1136. PMID: 27618891

・Discovery of Ipragliflozin (ASP1941): a novel C-glucoside with benzothiophene structure as a potent and selective sodium glucose co-transporter 2 (SGLT2) inhibitor for the treatment of type 2 diabetes mellitus. Masakazu Imamura et al. Bioorg Med Chem. 2012 May 15;20(10):3263-79. PMID: 22507206

・Design, synthesis and biological evaluation of 6-deoxy O-spiroketal C-arylglucosides as novel renal sodium-dependent glucose cotransporter 2 (SGLT2) inhibitors for the treatment of type 2 diabetes. Yibing Wang et al. Eur J Med Chem. 2019 Oct 15;180:398-416. PMID: 31325786   

・Structural selectivity of human SGLT inhibitors. Charles S Hummel et al. Am J Physiol Cell Physiol. 2012 Jan 15;302(2):C373-82. PMID: 21940664

・Inhibitor binding mode and allosteric regulation of Na +-glucose symporters. Paola Bisignano et al. Nat Commun. 2018 Dec 7;9(1):5245. PMID: 30532032

・Sodium-coupled glucose transport, the SLC5 family, and therapeutically relevant inhibitors: from molecular discovery to clinical application. Gergely Gyimesi et al. Pflugers Arch. 2020; 472(9): 1177–1206. PMID: 32767111

・SGLT 2 選択的阻害剤の創薬研究~新規経口血糖降下薬イプラグリフロジン(スーグラ®)の創製~ 今村 雅一他 https://www.jstage.jst.go.jp/article/medchem/26/2/26_76/_pdf/-char/ja

・新規 SGLT2 阻害薬ルセオグリフロジン水和物(ルセフィ®錠)の薬理学的特徴および臨床試験成績 高橋 禎介他 https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/146/3/146_150/_pdf/-char/ja

・2 型糖尿病治療薬、高選択的 SGLT2 阻害剤トホグリフロジンの創製 佐藤 勉他https://www.jstage.jst.go.jp/article/medchem/27/2/27_78/_pdf/-char/ja

・SGLT2 阻害薬(カナグリフロジン)による SGLT 阻害機序と消化管での作用 栗山千亜紀https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/148/5/148_245/_pdf/-char/ja

タイトルとURLをコピーしました