β遮断薬(βブロッカー)の化学構造と特徴〜構造式から薬剤を比較する〜

薬の構造と特徴

カテコールアミンの受容体選択性

アドレナリン受容体に作用する薬剤は、ほとんどがカテコールアミンの構造的特徴を持っています。

カテコールアミン(英語:catecholamine)とは、一般にチロシンから誘導された、カテコールとアミンを有する化学種である。レボドパや多くの神経伝達物質等(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)及び関連薬物の基本骨格になっている。カテコラミンとも呼ばれる。

Wikipedia

ノルアドレナリン→アドレナリン→イソプレナリンと、アミノ基に隣接する炭素にメチル基を増やしていくと、β受容体への選択性が高まります。

β1とβ2はサブタイプであって構造もかなり似ているので、βブロッカーはβ1受容体への選択性を高める必要があります。
(β2受容体を遮断してしまうと、呼吸器系や代謝系、中枢神経系などへの副作用の原因となります)

またアドレナリンβ1受容体は、ご存知の通りGタンパク質共役型の7回膜貫通型で、リガンドの受容体への結合による構造変化がGタンパク質へ伝わり、細胞内情報伝達経路が動きます。

βブロッカーは、主に水素結合でβ1受容体を阻害します。
(共有結合ではないため可逆的阻害となります)

プロプラノロール、アセブトロール

プロプラノロールのように単に脂溶性が高いと、血液脳関門を通過しやすく、悪夢やうつ症状など、中枢性の副作用が発現しやすくなるようです。
アセブトロールは親水性であるアミド基を導入することで、こうした中枢性の副作用を抑えることが期待できます。β2受容体の遮断作用も小さくなることから、気管支喘息は慎重投与で済みます。

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メトプロロール、アテノロール

メトプロロールやアテノロールでは特にβ1受容体への選択性が高まっています。この受容体選択性はベンゼン環4位の置換基導入により実現されることが分かっています。

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ビソプロロール、ラベタロール、カルベジロール

ビソプロロールやカルベジロールは脂溶性が高い上に、水素結合の場所も多いので、β遮断効果が他のβブロッカーより高いことが構造から推察でき、実際に遮断活性も高いです。
また、ラベタロールのように、βブロッカーに共通しているカテコール類似構造のベンゼン環に結合するエーテルがなく、α遮断活性を示すものもあります。

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実際にX線結晶構造解析を行うと、β1受容体を刺激するか遮断するかは、薬剤の微妙な構造の違いが、受容体の構造を絶妙に変えることにより現れているようです。

生体内での化学物質の動きと作用の奥深さを感じます!

併せて読みたい記事

参考:
・赤路健一「第5章 交感神経作動薬」『ベーシック創薬化学』化学同人. 2019. p.45〜52
・Warne;Edwards;Leslie;Tate. Crystal structures of a stabilized β1-adrenoceptor bound to the biased agonists bucindolol and carvedilol.Structure (London, England : 1993), 01 May 2012, 20(5):841-849

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